【お客様との話】認知症のひとの気持ち

あるお客様の話。

認知症が進行していくのが自分でも分かり、混乱し不安な表情をしていることもあるT様。
一人暮らしで、近くに頼れる親族もなく。
周りに迷惑をかけてはいけないからと、地域のゴミ捨て場の清掃当番のことや、近所のかたの葬儀に参列すべきかどうかなど、日々の暮らしの小さいけれど大切なことに、いつも頭を悩ませています。

時には、私バカになっちゃった、老人ホームとか入ったほうが良いのかなぁ、と言うことも。

でも昨日は、

こうやってデイに行って元気になったり、ヘルパーさんに来てもらったりしながら、家で出来るだけ暮らして行きたいと思う。これからもよろしくおねがいします。

と仰って頂きました。
強い気持ちのこもった笑顔でした。

嬉しかった。

 

私の亡くなった祖母は認知症でした。
まだまだ認知症に対する理解が無かった時代。
10代の私は気の強い祖母が好きではなく、物忘れの増えた祖母をイライラしながら見ていました。
父は話の通じない祖母に腹を立て洗面台の足元の扉を蹴って穴を開けました。
母はどうしたら良いか分からず毎日疲弊していました。

あるとき、亡くなってずいぶん経ってから思い出しました。
祖母が小学生の算数ドリルをしていたことを。

その時気づきました。
ああ、おばあちゃん、忘れていく自分、怖かったんだな、と。

時々
「愛ちゃん、オセロやろうか」
と言ってくれていた祖母に、私は優しくできなかった。意地悪な孫でした。

おばあちゃん、ごめんなさい。

 

大学を卒業するとき考えたのは、介護の世界でした。

辛い思いをする本人と、介護に苦しむ家族を少なくするための仕事をしよう。

そう思いました。

あの時から20年以上経ちました。
まだまだ道半ばにも届いていません。
もっと、もっと、進まなければ。

昨日のT様との会話が、23歳の私を思い出させてくれました。